ケース・クローズ!

今日もエンジン快調!

ヘリコプターの速度  ヘリコプターのあれこれ

ヘリコプタ―ははっきり言ってノロい。

 

仕事で使わせていただいている以上、あんまりヘリのことを悪く言いたくはないのだが、正直ヘリは世の中にある速い乗り物たちと比べるとなかなか厳しいものがある。

 

例えば新幹線。

けっこう前のことになるが、単発タービンヘリのAS350型で盛岡から花巻まで東北新幹線はやぶさと競争した事があった。まあ当然のように結果は惨敗笑。

盛岡駅を通過した時点でこちらはほぼフルスピードだったのに対し、はやぶさはまだ発車したばかりのノロノロ運転だったのだが、それでも猛加速するはやぶさから逃げ切ることは叶わず、花巻に着く前にアッサリ抜かされてしまった

 

同じ東北新幹線内の東京~仙台を例にとると、新幹線はやぶさとヘリコプターの所要時間はどちらも1時間30分ほどである。ヘリは途中で止まったりしないのに対し、はやぶさの方は大宮までノロノロ運転だし途中駅の停車時間もあるが、それにも関わらずほぼ同時という体たらくである。

 

こんなんだから、シンプルな直線勝負になったらヘリ側に勝ち目はほぼ無い。ヘリコプタ―のなかでも特に速度性能に優れているのはイタリア製のアグスタファミリーとかなのだが(下の写真はその一員であるAW139型)それでも巡航はせいぜい時速270kmあたりが良いとこで、よほど追い風が強くないかぎり、最高時速320kmを誇るはやぶさとかこまちとガチンコで競争しても勝てるわけは無いのである。

ましてや新幹線のほうは数百人もの乗客を乗せてそのスピードを出すっていうのだから、まったく日本の技術はスゴイものである。

とはいえ、これでもまだよくなった方なのだ。思うに、「いまどきのヘリは速いから飛行時間が少なくなっちゃって困るんだよね」なんて諸先輩方が言っているあたり、よほど昔のヘリはヘボかったに違いない笑。

 

ちなみに、東京~大阪の場合は箱根峠や伊勢湾を突っ切って飛ぶことができる関係で新幹線よりヘリの方が速い。新幹線のぞみ号だと大阪までは2時間20程度だが、ヘリコプターならば迂回しない限り2時間くらいで着くことができる。ある程度速度性能に優れた機体なら2時間を切るのはたやすいだろう。もっとも、リニア新幹線が開業した暁には絶対負けるだろうけど笑。

 

ヘリコプターの巡航速度は機種によって違ってくるが、概してローターの枚数とかエンジンの馬力とか機体の形状とかが要因としてからんでくる。

実際は、超過禁止速度(これ以上出してはいけないとメーカーが定める速度)というものがあり、これはまた違う要因のもとに定められているが、水平飛行を保ちながらこの超過禁止速度を超えられるヘリはそう多くないので今回は説明を割愛する。

 

スーパーカーや新幹線でも同じだとは思うが、マシンが速度を増すにつれてネックになってくるのが空気の流れによる強烈な抵抗だ。ヘリコプターも空気の中を飛ぶので当然この抵抗にさらされており、これは速度に対して2次曲線的に上昇してくるという厄介な特性がある。

水平飛行を前提とした場合、下の図のようにヘリコプターはエンジンの馬力をローターに伝え、そのローターを傾けて揚力と推力を生み出しながら飛行しているのだが、この推力を増して速度を上げていくとそれを上回るペースで抵抗も大きくなってくる。そして限界を超えて抵抗力が大きくなると、揚力か推力のどちらかが足りなくなってしまうので、結果的にそれ以上速度を上げることができない。

こういったところでヘリコプターの最大巡航速度は決まることが多い。速度をさらに上げるためにはエンジン馬力を上げるか抵抗を少なくするかのどちらかしかないが、エンジン馬力を上げようとすると今度は機体のミッションとかが耐えられなくなってしまうのでなかなか難しいところである。

そこで、抵抗を減らす方法である。スーパーカーや新幹線が凹凸の少ない流線形をしていることからもわかるように、ヘリコプターも流線型のスマートな機体は抵抗が少なく、速度性能に優れる傾向がある。

 

客席の横幅やテイル部分のつくりなどの機体形状も大事だが、意外と大きく影響するのが降着装置(ランディングギア)である。

ヘリの場合、ランディングギアがスキーみたくなっているもの(スキッド式)と、飛行機みたいにタイヤがくっついているもの(ホイール式)に分けられる。スキッド式は固定だが、ホイールタイプは旅客機と同じように車輪をしまうことができるので上空では底面がつるんとしたきれいな形になり、抵抗の低減に寄与する。(車輪がしまえないタイプのヘリもある)

 

スキッド式のランディングギア

こういった事情もあり、パワーの大きいエンジンを搭載していてなおかつ引き込み式の車輪を備えるヘリコプターは速度性能が高い傾向にある。

 

そうはいってもヘリは飛行機に比べて燃費も悪いしあんまり多くの人は乗せられないので、乗客を遠くまで迅速に運ぶなんて仕事はやはり向いていないのだろう。

ヘリコプターの真髄はやはり、飛行機では絶対に失速するような低速度においても飛ぶことができる、という点にある。

 

ところがこの低速で飛ぶ、というのもコレはコレで厄介な話だったりするので、次回はヘリの低速域についてお話したいと思う。