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ヘリコプターの脚  ヘリコプターのあれこれ

旅客機の離着陸、というのは見ていて非常にカッコイイ。

 

私は特に、着陸する瞬間にタイヤから白煙が上がる瞬間がとても好きだったりする。まったく、100トン以上の重さが地面につく衝撃を受け止める、あの降着装置の頑丈さには感心することしきりだ。そんな飛行機は、離着陸の際に滑走をする必要がある為、小型機から大型機に至るまで基本的にはタイヤが付いている。

 

ところがヘリコプターの場合、その場で浮き上がることができるので降着装置(ランディングギア)にタイヤは付いてなくても良い。特に小型ヘリの場合は多くの機体が下の写真のようにスキー板のようなものを履いている形式が多く、このタイプのものはスキッド式と呼ばれる。

スキッドタイプ

その一方、飛行機と同じようにタイヤの付いたランディングギアを装備するヘリコプタ―も多い。今回はそんなヘリコプターの脚部分について解説したい。

 

ランディングギアの役目としては、地上での機体重量を接地面へと分散させる作用や、接地時の衝撃を和らげるという作用などがある。もちろん地上で機体の安定性を保って駐機しておくにもランディングギアは欠かせない。さらに、緊急着陸時のような強い衝撃にも耐えて機体構造を守れるようなものでなくてはいけない。

このように要求される事柄が多いため、開発する会社にとっては悩みどころだろうと思う。

 

スキッド式の場合、2本のスキー板という『』で機体重量を接地面に伝え、なおかつ機体重量や接地時の衝撃はクロスチューブという、機体下部に横向きについているバーのしなりで持つというのがおおまかな設計である。このクロスチューブのしなりで持つというのが重要で、この部分をある程度しなやかに作る必要があり、あまりに大きな荷重がかかると支えきれなくなってしまう。そのため、スキッド式で対応できる機体の大きさには限界があると言われている。

スキッド式のものは空港内を移動するときなどはその場で浮き上がり、低空飛行状態で移動しなくてはいけないのだが、車輪の収納とかタイヤの空気圧とかのめんどくさいことが無いので整備性が良い。反面、機体を牽引車で引っ張る時なんかは画像のように別でホイールをつけなければならず、ちょっと手間がかかる。

 

いっぽう、タイヤの付いているタイプ(ホイール式)はというと機体重量を接地面に伝えるのは車輪の接地部分のみであり、『』で伝えるようなかたちとなる。接地の衝撃や機体荷重は各ギアに取り付けてある緩衝装置(いわゆるサスペンション)が受け持つ形となる。

荷重が狭い部分に集中するので同じ機体重量だとしても接地圧はスキッドタイプに比べて高くなるが、緩衝装置をはじめとする各構成部品を増強すれば大型機の重荷重にも対応ができる。このため、中型機以上になるとホイール式の機体が多い。

 

ホイールタイプ

その他、ホイールタイプの特徴は以下のとおり。

 

・衝撃吸収能力がスキッド式に比べて高く、乗り心地の面で有利となる。また滑走着陸(飛行機と同じように速度がある状態で着陸すること)も容易で、訓練飛行などがやりやすい。スキッド式の機体で滑走着陸をすると滑走路に傷がつくため、そういった訓練ができる場所が限られる。

 

・地上にくっついたまま移動ができることにより、ダウンウォッシュ(ヘリが吹きおろす風)が周囲にもたらす影響が比較的少ない。スキッド式だと浮き上がる必要があるのでダウンウォッシュがとても強く、重量の軽い小型飛行機などは簡単にひっくり返ってしまう。小型機がたくさんいるような飛行場では非常に気を遣う。

 

・機体に収納可能なギアであれば機体の抵抗が少なくなり、高速性と燃費向上に寄与する。これについては以前のブログでも述べているので、そちらもご覧いただけると幸いです。

 

as365.hatenadiary.com

 

・タイヤという『点』で降りるため、石ころの多い場所などはスキッドタイプに比べると降りやすい。

 

・部品点数がかさむので整備作業が増加し、コストもかかる。価格の安さをウリとする小型ヘリにスキッド式が多いのはおそらくコレが理由だと思われる。

 

・スキッド式に比べると運用時に脚回りにかかわるリスクが増える。車輪の出し忘れタイヤのパンクパーキングブレーキの操作など。また、引き込み式の場合、飛行中に非常事態が起きても車輪を出すのにある程度時間がかかるので手順が複雑になるほか、低高度では接地に間に合わない危険もある。こんな理由もあってか、単発のヘリコプターで引き込み式の車輪というのは見たことが無い。

 

・『点』で降りるうえに最低地上高が低い傾向があるため、舗装がなされていないような場所は比較的苦手。また、接地圧が高くなる傾向にあるので柔らかい地面や草むらに降りるのも苦手とする。

空港以外の場所に降りることが多いドクターヘリにスキッド式が多いのは、このへんが理由なんじゃないかと勝手に推測している。

 

主な特徴はこんなところである。後半の方は私の余計な推測がくっついてしまっているがご容赦頂きたい。

結局どちらも一長一短であるし、機種によってはスキッド式とホイール式どちらも選べるようになっているのもある。前述のとおりホイール式にすると速度性能に優れるが、スキッド式にするとタイヤをしまう部分を燃料タンクに替えることが出来る機体もあり、飛行時間が伸びる傾向も。このへんは事業者のニーズ次第というとこだろう。

 

私個人的にはホイールタイプのほうが好きだったりする。空港やヘリポートなどの、他の機体がたくさんいるところでホバリング移動するのは結構気を使うし、移動中でもコレクティブレバー(パイロットが左手で持ってるパワー調整のレバー)から手を放してスイッチ類を操作できるホイールタイプはやはりありがたく感じる。

それは別としても、車輪をしまい込んで流線形になったヘリというのはなんと言ってもかっこよく見えるものなのだ笑。

 

まあ、一番嬉しいのはスキッドに比べて衝撃が伝わりにくく、着陸がヘタなのがばれないということなんだけど・・・。

 

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました