ケース・クローズ!

今日もエンジン快調!

オートパイロット  ヘリコプターのあれこれ

オートパイロット(自動操縦)という言葉を聞いたことはおありでしょうか?

 

飛行機を題材にした映画、ドラマなどで操縦席が映されるシーンがあると、操縦士がオートパイロットをオンにして飛んでいる場面を見ることがある。そういったことから、航空業界ではない一般の方でも、この「オートパイロット」という単語を聞いたことのある方は多いと思う。

 

私は飛行機のシステムについては無知なので仕組みを説明することはできないが、昨今はヘリコプターのほうにも様々な機能のオートパイロットが搭載されおり、それらはパイロットのワークロード軽減に大きく貢献している。今回はそんなヘリのオートパイロットについてざっくり紹介したい。

 

小型ヘリは別として、昨今の中型以上のヘリともなるとオートパイロット標準装備の機体が多い。オートパイロットといっても色々な機能があるので、その中でも主な機能を3つに分けて簡単な解説をしてみたいと思う。

 

・安定性増大機能

 

SAS機能(Stability Augmentation System)と呼ばれる機能で、その名が示す通り機体全体の安定性を自動的に高めてくれる便利なものである。パイロットは単にサスと呼ぶ。操縦桿から各操作部に行く途中にアクチュエーターと呼ばれるものが付いており、これらが細かい修正操作をつくり出すことによって機体の細かい動揺を安定させるのである。機体の動きは、加速度計や角速度計といった機体についているセンサー類で感知する。

一定の機体姿勢を維持させる力はないが、外乱による動きを減少させて最終的に止めるように作用し、イメージとしては低反発まくらに機体をムギュっと押し付けたような動きになる。

 

一般的にイメージされるであろうオートパイロットと違い、こちらはヘリが離陸する前からすでに働いていて、とくにホバリング中や低速飛行中の不安定な場面では大きな恩恵が得られる。

大きなヘリポートなどでヘリコプターをたくさん目にする機会がある場合、大きなヘリは小さいヘリほどフラフラしていないように見えたとしたら、それはこのSAS機能によるところが大きい。(まあ、パイロットが上手ければ別なんですけど. . . ↓

 

・姿勢保持機能

 

機体についている各センサーの情報を基に、ヘリに同じ姿勢を維持させようとする機能。ヘリのメーカーによってASEモードとかATTモードとかの呼び方がある。こちらは機体の姿勢をコンピューターが記憶し、それを保つようにコンピューターがアクチュエーターを介して操縦桿を修正するもので、トリムと呼ぶパイロットもいる。この基準となる姿勢はパイロットがいつでもすぐに変えられる。

 

ヘリは不安定な乗り物なので、通常はパイロットが手を離すと操縦桿はコテンと倒れてしまうが、姿勢保持がアクティブになっていれば操縦桿が固定される(アンカリング)ので、パイロットは操縦桿を持つ手を離すことができる。長距離を飛ぶ場合、この操縦桿を離せるか否かということがなかなか大きい疲労の差となってパイロットにのしかかってくる。

あくまでも姿勢を維持するだけで特定の高度や速度を維持はしてくれないが、上空で機体の姿勢とパワーがうまく釣り合えば、ずっと一定高度と一定速度での飛行が可能になる。

 

カップリング機能

 

機体のほうで設定する数値とオートパイロットを同期させる機能。わかりやすく説明するとパイロットがコックピット上で設定した高度、速度、その他もろもろの数値を機体に守らせようとする働きをするもの。パイロットはカプラーとかFDとか呼んだりする。

おそらく一般的にイメージされるオートパイロットはコレであろう。

機能の一部を紹介すると、

・設定した高度まで上昇した後、自動的に水平飛行をする

・設定した針路へ旋回、維持する。

・着陸用の無線電波を拾って自動的に滑走路へアプローチする。

・操縦桿を倒さずともスイッチ操作だけで加減速ができる。

といったところだ。大型機や新しい機体とかだと更にいろいろなモードが用意されている。

これらの機能を場面に応じて組み合わせることで、ヘリは連続的な自動飛行が可能となる。これらをコックピットであれこれ設定している時の操縦士は、パイロットというよりさながら機器のオペレーターである。

前述の2つの機能とは異なり、カプラー機能はヘリが離陸後にはじめてアクティブにすることができる。というのも、ヘリは低速状態だとものすごく不安定なので、一部のモードを除いて各機能は速度が一定以上にならないとオンにできないようになっている。もっとも、どれくらいの高度まで上昇するとか、離陸後どの方位に向かって飛ぶかということについては地上にいるうちからあらかじめ設定できる。

 

主な機能としてはこんなところで、上で紹介したもの以外にも、旋回中の横滑り修正やパワー増減に応じてペダルを自動的に動かすなど、細かい機能もある。また、機種によってそれぞれの機能に若干の性能差(反応速度や精度)もあり、新しい機体になるほど性能も良い傾向がある。

 

もっとも、オートパイロットとて万能ではない。パイロットがオートパイロットに頼り過ぎて別の事に集中してしまうのはとても危険と言える。

 

怖いのはモードを間違って入れてしまったり、モードが解除されていることに気付かないで飛び続けてしまうことだ。それに、オートパイロットだって機械なのだから故障だって有り得る。特に、高度保持やルート保持のモードは怖い。

例えば、高度保持モードが入っていると勘違いをしたパイロットが操縦桿から手を放し、他の作業に気を取られていたらどうなるか。パワーが足りずにゆっくり高度が下がっていったとして、パイロットが気付くのが遅れたら大きな事故につながる恐れもある。

上記のようなことを防止するためにも、各モードが正確に作動しているか常に確認し続けるというのもまた、操縦士の大事な役目だったりする。まして、民間ヘリは一人操縦が基本だから尚更と言える。

 

個人的にオートパイロットは機体の機能というより、もうひとりの操縦士みたいなものだと考えている。要は、操縦桿を一定の位置で保持してもらったり、高度速度をキープしてもらったりと、本来は操縦士自らがやらなくてはいけないことをお任せしているような状態だと思うからだ。

どれだけ優秀なオートパイロットが装備されているとしても、そのもう一人の操縦士たるオートパイロットと意思疎通がマトモに取れていないようでは、安全もへったくれもあったもんじゃない。

つまるところ、結局最後に安全性を担保するのは操縦士に他ならないのである。

今回はすこし堅苦しくなりましたが、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。