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エアバス AS365型ドーファン  ヘリコプター紹介

あらゆる用途に対応する俊足のドルフィン

 

今回は官公庁、民間どちらでも人気の中型ヘリコプター、AS365型ドーファンの紹介。このブログで以前紹介したH125型やAS350型と同じ製造元のヘリである。

 

全長が14m以内に収まる比較的コンパクトな機体ながら最大離陸重量が4トンを超える規模を持つ、T類と呼ばれる種類のヘリコプタ―。そのため、双発タービンヘリの免許に加えてこの機体個別の免許も必要となる。エンジン火災用の消火器系統をはじめとして機体の主要部品が複数系統となっており、心臓部はタービンエンジンの双発である。

もともと、これよりちょっと小さくてエンジンが1つのSA360というヘリ(この機体はぜんっぜん売れなかったのだが)があったのだが、これをもとに各部のつくりを見直したうえで700馬力クラスのエンジンを2つ搭載し、双発ヘリコプターとして昇華させたのがこのAS365である。

さすが、世界有数のヘリメーカーだけあって二度は外さない。結果的にこのAS365は成功を収め、多数の国で使われるヘリとなった。

日本では消防ヘリ、県警ヘリ、報道ヘリでの活躍が主だが、かつては韓国の某テクノロジー企業の会長機として使われていたこともあり、あらゆる用途に対応することができる。

 

ペットネームのドーファンとはフランス語でイルカという意味で、イルカと表現されるとおりの流線形な機体は高速性に寄与する。形だけにとどまらず、引き込み式の車輪、フェネストロン(テイルローターが尾翼に埋め込まれている形のもの)といった高速性に有利な条件を備えており、当然130kt巡行なんて朝飯前。さらにフランス製ヘリお得意の、3時間以上飛んでいられるという長い航続時間も持ち合わせている。

このヘリの初飛行は1970年代とけっこう昔なのだが、今日においてもここまでの高速性と航続距離をもつ中型機というのは少なく、このへんが今も根強く使われる理由なのではないかと思う。

もうさすがに古くなってきて新型機への置き換えも進んでいるが、地方の報道ヘリとか県警ヘリとかはまだまだ多くの数が残っている。特に東北とか北海道みたいなバカ広い地方では航続距離も求められるため、この機体でないとなかなか不安な場面もあったりするし、現に北海道、東北の民放ヘリは今もこの機体が大半を占めている。

 

全体的に丸っこいシルエットのAS350に比べるとシャープな印象の外見ながら機体構造はAS350系統と似ており、メインローター付け根のスターフレックスなんかもほぼ同じ。設計が古い機体なので燃料系統とか電気系統とかは少々クセがあるが、それでも並み居る中型機の中では比較的勉強はとっつきやすい方なのではないかと思う。

 

ほかに外見で目を引くものといえば、巨大な尾翼と大径のフェネストロンだろう。さすがに最大離陸重量4トン超えという事もあってテイルローター推力も大きなものが必要になるらしく、それに伴って尾翼も大きくなっている。ちなみにこの大剣みたいにでかい尾翼は巡航状態では有利だし何よりカッコイイのだが、横風のときは煽られまくってあまり乗り心地は良くない笑。

 

 

乗ってみた感じとしては、同じメーカーというだけあってAS350型の安定感を増大させたような印象。派手なパワーがあるわけでもないし、14m未満という大きさの割にはちょっと鈍重な感じを受けるものの、そのほどよいダルさが操縦しやすくて好きだったりする。

それに、中型以上のヘリはホバリング中にノーズアップがきつくなる傾向があるが、この機体はそれがあまり無くて前方の見通しがよく、ホバリングから離陸、着陸までがとてもやりやすい。

少々古いタイプながらオートパイロットも一通り揃っており、東北や北海道のような広大な土地で飛んでもさほど疲れないのは嬉しいポイントである。

 

 

ただ困るのは、AS350と同じようにホバリング中、水平飛行中問わずにやたら右に傾くことだ。オートパイロットの恩恵もあってAS350ほどフラフラはしないのだが、他の機体に乗ったあとにこいつに乗ると、だいたい操縦桿の右当てが足りなくてヘナチョコな離陸になることが多い。ヘリはホバリング中、テイルローターの横推力を相殺するために多少どちらかに傾くものなのだが、この機体は非常に顕著に感じてしまう。

 

あとの難点は、客席の天井が低くて圧迫感があり、後ろに乗った時の居住性がお世辞にも良いとは言えないことか。客席は大人8人がゆったり座れるくらいの面積はあるものの、後席はとても天井が低くて大人であれば頭が着いてしまうほど。

もちろん小型ヘリに比べれば広いには広いんだけど、他の中型機と比べてしまうと一歩譲るような感じがするのも正直なところだ。

 

そんなこんなでちょっとした難点はあるものの、仕事で使う身としてはとても扱いやすくて良いヘリである。古いヘリとはいえ、今後もしばらくは活躍を続けて欲しいものだ。

 

余談だが、ガキの頃にこれの模型を持っていた関係で、私が生まれてはじめて名前を覚えたヘリコプターはこのAS365型である。もっともその頃は、10数年後に自分が実機に乗れるなんてまったく思っていなかったが・・・。