ヘリコプターの魅力といえば旅客機よりも低高度を飛ぶゆえ、四季の変化をより近くに感じられることだろう。
桜並木がピンクの筋となる春、木々が青々とする夏、紅葉が移ろいゆく秋、銀世界の山々を望む冬。それぞれに違った魅力があり、これらを見るだけでも四季のある国に生まれて悪くなかったなと思わせてくれる。
しかし、このブログがそんな平和な話で終わるわけが無い。今回は四季それぞれでヘリにとってツラいところを書いていこうかと思う。ぶっちゃけこんなことを書いてもしかたないことだとは思うが、最後までお付き合いいただけると幸いです…。実はヘリのコックピットってそんなに平和なモンじゃないのです。
まず、春の天敵はなんと言っても花粉!これに尽きる。
やはり春に困るのは毎年多くの人々を悩ませているであろう花粉の襲来。機内空間が密閉されていないヘリも当然例外ではなく、ピーク時期に山岳地の取材なんて行こうものならもうアウト。目と鼻が大変なことになって帰ってくることになるのは容易に想像できる。
特に小型ヘリだと両手が離せない場面も多々あったりするので、飛んでる最中にくしゃみ多発鼻水ズルズルになったときはもうシャレにならない。ここのところ感染症対策の観点で飛行中もマスクをして乗務するのだが、両手がふざがっている時でも遠慮なくくしゃみをぶっ放せるのはまったくありがたい限りである笑。
夏はとーにかく暑い!もう笑っちゃうくらい暑い!
クーラー設備を備えるヘリももちろんあるが、そんな気の利いた装備のヘリなんてそうたくさんあるわけもなく、たいていの場合は汗ダラダラでの操縦を余儀なくされる。
まあ、上空は地上に比べて結構涼しいし機内換気もできるのでマシなのだが、地上にいるときはサウナ地獄もいいところである。とくに地上で離陸順番待ちやホバリングをしている時などは最悪で、離陸許可が出るより前にワタシの意識のほうが離陸していってしまうんじゃないかと思うほど。
それに加えて夏に怖いのはやはり夕立。大型旅客機だって積乱雲は避けて飛ぶくらいなのだから、ヘリだったらさらにシャレにならない。黒い雲がちょっとでも近づいてきたら尻尾巻いてスタコラサッサと逃げたいところだが、むなしく大雨に捕まってしまうこともある。古いヘリだとあちこちから雨漏りしてくる場合もあり、そんな時はもう機内はわちゃわちゃである。
秋にツラいことは………ぶっちゃけあまりない笑。
この時期は比較的過ごしやすい気温だし、見通し距離が良好な日が多いのでフライト自体はやりやすいことが多い。日差しがあれば機内はそれなりにポカポカにもなるため、お手洗いで悩むことも少ないといえよう。
強いて難点を挙げるなら、秋晴れの日だと空が澄み切っていることと太陽の位置が低めということもあり、日差しがとても眩しく感じられて見張りがやりづらいところか。もっとも、これは冬でも同じことが言える。
冬は言わずもがな寒さが大敵となる。
超小型ヘリのロビンソンから大型ヘリまで、基本的に暖房設備は付いているので夏の灼熱地獄に比べれば幾分マシなのだが、それでもやっぱり寒いものは寒い!まして古いヘリなんかだとすきま風が遠慮なく入ってくる場合もあり、ぶっちゃけ暖房をつけていても寒いことは多々ある。
そして寒いとお手洗いが近くなるのは人間として当然の流れであり、トイレ設備のない小型機のパイロットにとってこの時期は恐怖でしかない。ヘリはせいぜい3時間くらいしか飛べないのでまだいい方なのだが、小型飛行機だと5~6時間くらい飛べるものもザラであり、本当に固定翼のパイロット方は苦労されていると思う。とてもじゃないが、フライト前は怖くてコーヒーなど飲めたものじゃない。
そのほかに四季の変化ということで言うと、外気温によってヘリの性能も若干だが変化する。
例えば気温の高い時期は空気密度が低くなるので、メインローターが生む揚力の効率が悪くなり、全体的に性能が落ちる。逆に気温が低い時期は空気密度も高くなり、性能面では有利になるので、結構余裕をもって離陸できたりする。
パワーの無いヘリで離陸する時などは顕著で、暑い時期と寒い時期で待機燃料量を変えるケースも少なくない。もちろん、保証されている重量の範囲内でだが。
こんなところである。前半はなんか愚痴のようにもなってしまったが、これはヘリの客席にも当てはまることなので、今後もし乗られる機会があったら参考にしていただけると幸いです。
上でも述べているように、やはり一番ありがたいのは秋の気候である。まったく、毎年秋が来るたびに、一年中こんな気候だったらいいのにと思ってやまない。
今回も最後までご覧いただき、ありがとうございました。