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今日もエンジン快調!

レオナルド AW139型  ヘリコプター紹介

中型機最強の性能を誇る、マッチョ系イケメンヘリ

 

中型機、と呼ばれるヘリ群がある。離陸重量は4トン~7トンくらいでそこそこの重量物を積むことができ、テレビ局や各県警などで好まれる大きさのヘリ。反面、個別の免許が必要でイチイチ試験を受けなければならず、構造が複雑でパイロットやメカニックにとってはどうにも面倒くさいヘリの種類である。

今回は、そんな中型機の中でいま最もアツい機種の紹介。イタリアのレオナルド社が販売する高性能な双発ヘリコプター、AW139型。


最大離陸重量6トンを超える、中型機の中でも大きい方に入る機体。画像でわかる通り、新幹線のように尖った先端部とスマートな外見をしていて一見華奢に見えることもあるが、実際は全長16m超、高さ5m近くにも及び、間近で見るとなかなか迫力がある。

 

まあイタリアらしいというかなんというか、何かとトラブルが多くて整備士さんたちには嫌われることの多いヘリなのだが、そこはスーパーカーが大好きなイタリア。性能面に関しては申し分ない。

最大離陸重量は6.4トンなのに対し、搭載されるPT6C-67Cエンジンから絞り出されるそのパワー、離陸出力1680軸馬力。これはひと昔前の大型ヘリコプターの馬力にすら匹敵し、そのパワーたるや軽い状態なら片側エンジンだけで普通にホバリングが出来てしまうほど。当然TA級運用が可能で、それもAS365とかと比べると相当キツイ運用ができる。

そんなパワーなので、馬力こそ正義!な防災ヘリとかは現在この機体一色に染まりつつある。

 

もちろん速度面だって抜群。引き込み脚を備える流麗な機体は抵抗が少なく、140kt以上で巡航しててもじつに余裕そのもの。このレオナルドというメーカー製のヘリ全般に言えるが、速度に関しては世界中の民間ヘリを相手にしても後れを取ることはほぼ無いのではなかろうか。

ただぶっ飛ばせるだけではない。オーディオのノイズキャンセラーと同じ原理で機体の振動と逆位相の波を発生させる機構が付いているものもあり、高速巡行中でも振動は少なめとなっている。

さらにはオートパイロットもめちゃくちゃ優秀で、もう旅客機ばりに何でもかんでもやってくれる笑。高度維持、速度維持なんて当たり前。GPSと連動したコース設定、同じところをぐるぐる回る待機モード、設定コースより1マイル横にズレたところを平行に飛ぶモードなど、設定すればほぼすべてのことを自動でやってくれちゃう。

ヘリのオートパイロットについては過去の記事もご覧いただけると幸いです。

 

as365.hatenadiary.com

 

兎にも角にもオートパイロットが優秀なため、この機体を「ヘタクソになるヘリ」とか「飛ぶのではなく、オートパイロットに飛ばさせるヘリ」と表現する人もいる。

 

 

ちなみに、高度なコンピューターをたくさん装備しているが、これらのほとんどは尖った機体先端部に収納されている(エンジンコントロールとかは後部に収納)。なので先端部の冷却がうまくいかず、機器類がオーバーヒートなんか起こしてしまった日にはもうパッパラパーである。まあ、だからこそ冷却に有利な機体先端部にあるんだろうけどね。

 

最近のヘリなのでアナログ計器は無く、バックアップの計器も含めてすべて液晶パネルに表示されるようになっている。コンパス針路とは別に、風を計算して実際に飛んでいく方向まで自動で示してくれる機能もあり、本当に至れり尽くせりといったところ。

 

乗らせていただいたときの第一印象は「とにかく平和!」ということに尽きる。素晴らしきかな高性能オートパイロットとパワフルエンジン。とにかく、ホバリング、低速飛行、高速巡航まで終始安定していて、パワーを使ってる感、速度を出してる感が希薄に感じるほど。パワー的にカツカツな小型双発機と比べると別次元ともいえる余裕である。

安定してるのは何も飛行中だけではない。1.9mという、オマエいい加減にしろ的にホイールトラック(左右のタイヤの水平距離)が狭かったAS365に対し、こいつは3.04mのホイールトラックを確保しているので地上での走行も安定感がある。

全長が16m以上あるので狭いヘリポートとかでは少々気をつかうが、それでもこのヘリが苦手とするフィールドなんてほぼないんじゃないかと思うほどだ。

 

さて難点といえば他の中型ヘリコプターの例にもれず、こいつもホバリング中やたら後ろに傾く傾向があり、乗ってる人が少ないと10度くらいノーズアップになってしまってなかなかやりづらいことか。

10度と聞くとあんまり大きい数字に聞こえないが、一般的な旅客機の着陸時機首上げ角度がだいたい4度~5度。その2倍近くとなるからこれがなかなかクセモノである。

速度があるときに減速しようと思ってさらにノーズアップしたりすると、もうほとんど空しか見えないし、ヘリポートとかに高角度で降りる時なんかはほとんど着陸場所なんて見えたもんじゃない。

まあ、この規模の機体にしては計器盤が小さくて前方の視界は良好なため、まだ操縦しやすい方ではあるのだが・・・。

 

これだけの性能を持つヘリなので、当然ながら値段は張る。正確な値段はわからないが、海上保安庁が昔このヘリを導入した際は3機で約50億円だったと公表されているため、1機あたりおそらく16億円は超えると思われる。

しかし日本には、このヘリをリムジン仕様にした挙句、ゴルフ場に行くまでの送迎ヘリとして買ってしまう方もいらっしゃるのだからまったく世間とは広いものである・・・。